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「CLON」では、いわゆる「仮想世界」のアンチテーゼとして、ユーザー自身とその分身=CLONが過ごす「個室的な仮想空間」のみが与えられます。このCLONルームは、とてもパーソナルでプライベートな場所です。個人の情報端末である携帯電話のなかに、自分自身とその分身が過ごすための個室が用意されています。
この個室は、ユーザーの趣味と嗜好、そして普段の行動などを手がかりとして、色々なかたちでつながりあっていきます。こじんまりとした、意識の行き届く範囲の空間=「個室」での自身×CLONの活動が「世界」をつくりだしていく。これは現代社会に生きる私たちの日常生活、ほぼ終日の時空間をともに過ごす携帯電話に投影される自身の意識とどこか重なり合う、斬新な世界観です。
携帯電話のスペックは飛躍的に向上し、ひと世代前のコンシューマゲーム機クラスの性能に到達しています。しかし「CLON」では、いわゆる3Dグラフィックスとは違うアプローチが取られています。
必要最低限の面積に、可能な限り多くの情報量が詰め込まれた携帯電話の画面。ここに奥行きを持った精緻な三次元空間を描画することに果たして意味があるでしょうか。むしろ今こそ、長い歴史を持ち、私たちが慣れ親しんできた二次元表現が持つ価値を再考すべきなのかも知れません。
平面表現は、ことばと想像力を纏うことで無限の奥行きを備えることができます。「CLON」では、ピクトグラム的なグラフィックスとモーション、そしてことばのやり取りのなかにユーザーが思い描く「無限の奥行き感」を実現しようとしています。
「CLON」では、すべてのコミュニケーションはCLONを媒介して行われます。ユーザー同士が直接ことばをやり取りすることはありません。
肉声、対面のコミュニケーションとは異なり、発声やジェスチュアをともなわないネット上のことばのやり取りは、端的で率直である反面、ときに拙く、切ないものとなりがちです。「CLON」では、ユーザーのインターフェイス同士を、各々の個性が反映されたCLONたちがつなぎあわせていくことで、穏やかで「そっ」とした意思のやり取りが行われます。
「CLON」が持つネットワークを、位置情報サービスと連携させることもできます。CLONはユーザーが実際にいる場所の周辺、あるいはユーザーが残したテキストに含まれる地名のまわりを巡り、色々な情報を拾い集めてきます。「個室」に舞い戻ったCLONは、それらの情報を最適化して「そっ」とつぶやきます。
この考え方を活かして、位置情報に限らず、さまざまなサービスと連携することも可能となります。人々は「検索」をやめ、自分の分身がささやく「つぶやき」に耳を傾けるようになるのかもしれない。「CLON」の向こうに、そんな未来を思い描いています。